【研修医向け】やさしい麻酔科標榜のための手引き

今回は、自分の備忘録も兼ねて麻酔科医を標榜したい人に向けての手続きをまとめておこうと思います。

 

まず、麻酔科標榜が許可されるためには、次の2つの条件のうち、どちらか一つを満たす必要があります。

  • 医師免許を受けた後、麻酔の実施に関して十分な修練(麻酔指導医の実地の指導の下に専ら麻酔の実施に関する医業を行うこと)を行うことのできる病院等において、2年以上修練をしたこと
  • 医師免許を受けた後、2年以上の麻酔の業務に従事し、かつ、麻酔の実施を主に担当する医師として気管への挿管による全身麻酔を300症例以上実施した経験を有していること

ぼくを含め研修医の方は、麻酔の実施を主に担当する医師にはなりにくいこと(指導医とともに麻酔をかけるため)から、上の条件での申請を行うのが主流であると思います。

(実際、医道審議会の議事録を見ても、上の条件で申請する人の数のほうが圧倒的に多かったです)

その場合、厚労省のHPで配布されている書類のうち、「別紙第1+別紙第2」に記載する必要があります。

www.mhlw.go.jp

 

近年は利便性の観点から、基本的にはe-Gov電子申請システムの仕様が推奨されているみたいですね。

なお、電子申請をする場合はマイナンバーカードの番号が必須になるので、まだ持っていない人は早めに作っておきましょう。

shinsei.e-gov.go.jp

 

申請に必要な情報

申請者の氏名、住所、生年月日、略歴、医籍の登録番号及び医籍の登録
年月日 

これは申請時の情報ですね。

略歴は就活の時に書く履歴書みたいな感じです。

医籍の登録番号と登録年月日は医師免許を見るとわかります。

申請者の従事先の名称、診療科名及び役職又は地位

申請時に勤務している病院の名前を書いてください。

役職については、「医員」とか書いておけばいいと思います。

次に掲げる麻酔の実施に係る業務(以下「麻酔業務」という。)に関す
る経歴
イ 麻酔業務を行つた期間
ロ 麻酔を実施した症例数
ハ 麻酔業務を行つた施設名
ニ 麻酔の実施に関して十分な指導を行うことのできる医師(以下「麻酔指
導医」という。)の氏名 

経歴については、別紙第1と別紙第2で一致させましょう。

期間は、1カ月に満たない場合は切り捨てです。

先に述べた上の条件で申請する場合も、症例数の記載は必須です。

 

別紙第2については、施設ごとで作成する必要があります。

なので、初期研修と専攻医の時点で勤務先が変わる場合、卒業前に作成しておくほうがベターでしょう。

別紙第2では指導医の専門医番号(認定番号)を記載する欄があるので、忘れずに聞いておきましょう。

また、病院の公印を押印する必要があります(電子申請とは……)。

 

注意事項

手術において行う麻酔に関する業務に週30時間以上従事すること。 

週5勤務なら6時間以上は働きましょう。

麻酔の実施を担当する医師として、修練を行う日当たり1例以上、手術において行う麻酔を経験すること。ただし、医道審議会医道分科会麻酔科標榜資格審査部会において、十分な修練をしていると認められた場合は、その限りではない。 

1日に1件もない日が病院によってはあるのかもしれません。

でも、日に複数件麻酔をかけることもあるでしょうから、ここは平均したら1日1件以上あると思います。

もし少し満たない場合でも、よっぽどのことがないと認められないなんてことはなさそうですが……

「麻酔の実施に関して十分な修練を行うことのできる病院又は診療所」とは次に掲げる要件の全てを満たす医療機関であること。
(ア)麻酔部門の責任者として、十分な指導を行う医師が常時勤務していること。
(イ)麻酔科医が実施した症例(以下「麻酔症例」という。)が年間200症例以上であること。
(ウ)安全な麻酔を行うための手術室、半閉鎖回路麻酔器などの施設、設備が整備されていること。

麻酔科の常勤医がいない場合→その施設での研修はカウントできません、諦めましょう。

症例数が200症例以下の場合→その施設での研修はカウントできません、諦めましょう(そもそも急性期病院でそれは経営が傾いていそうですが)。

 

麻酔記録や手術記録の提出を厚労省に求められる場合もあるそうですが、普段業務で書いているものを提出すればよいと思います。

実際に提出を求められた先生はいるんでしょうか? もしいたら教えてほしいです。

主な麻酔担当医として麻酔を実施していない場合、麻酔を実施した時間帯が重複している場合、又は術者兼務で実施した麻酔の症例の場合等については、申請に係る症例として認めないこと。

「申請に係る症例」と書かれているので、やはり下の条件で申請する場合のことではないかと想像します。

 

申請についての概要と注意事項は以上になります。

オマケですが、研修医のうちに麻酔科を回る期間について。

 

書類を厚労省に提出して、年に3回書面による審査があります。
それぞれの締め切りは1月末、5月末、9月末(4か月ごと)となっています。
1月末までに提出した場合は4月、5月末なら8月、9月末なら12月に結果が通知されます。

 

研修医のうちに3か月麻酔科として麻酔業務に従事しておくと、最短ルートをとったときに
3か月(研修医期間中)+12か月(卒後3年目の一年間)+9か月(卒後4年目の4月~1月)
で24か月(=2年間)となり、上述の1月末の締め切りに重なります。

 

「麻酔科標榜医をとるなら研修医のうちに3か月以上麻酔科を選択しろ」と言われるのはこのためです。